復帰に離婚。デビューから20年が経とうとしているのに相変わらず宇多田ヒカルの話題が世間を賑わせている。
宇多田ヒカルがautomaticでデビューした当時は「J-R&B界に期待の新生現る」的な扱いだった。MISIAの台頭から始まり、doubleにsugar soul、島野百恵にsilva、sakura、tina、bird、クリケイ、傳田真央など多くのシンガーが次々と登場し、当時のJ-R&B界はバブル期を迎えていた。しかし次々と現れる多くのシンガーの中でも宇多田の存在は耀いていた。今思えばそれが才能と言うものなんだろうなとは思う。特にAutomaticでデビューしてからFirst Loveというアルバム発売までの流れは完ぺきだった。
その後はAddicted To Youでまさかのジャム&ルイスの起用。これでライトなR&Bを好む層はもちろんのこと、ディープなR&Bを好むコアな層の心をがっつり掴んだかのように思う。そしてwait&See ?リスク?も引き続き、ジャム&ルイスが手掛けていた。
安室をダラスオースティンが手掛け、Doubleがブライアンアレクサンダーモーガンの曲を歌い、mimiがドウェインリギンス、そして宇多田がジャム&ルイスの曲を歌った。この当時の流れは本当に素晴らしかった。しかも飛ぶ鳥を落とす勢いだったロドニー・ジャーキンスが宇多田をプロデュースするというニュースが流れると更にみんなの期待は高まった。
でも残念ながらタイム・リミットは期待を裏切る仕上がりになってしまった。メロディもトラックもロドニーが手掛けたにしては地味すぎる。悪くはないけれど、大して良くもない。当時トニ・ブラクストンのhe wasn’t man enoughやディスチャのSay My Nameを手掛けて旬を迎えていたロドニーの作品の中でも外れを引いてしまった感は否めなかったと思う。そもそもタイム・リミットは両A面とされていたが2曲目という扱いだった。
それがきっかけなのかどうかは知らないが、Can You Keep A Secret?、FINAL DISTANCEを出したあとはtravelingから急にポップ路線となっていく。それはそれで素晴らしかった。Kiss & CryやHEART STATIONなど好きな曲もあった。
しかし、やはり宇多田にはR&B路線を貫いてほしかったというのが本心で、なんとなくあたしは寂しかった。アメリカでUTADA名義でリリースをしたのは個人的には嬉しかったけれども、やはり宇多田ヒカルという名義にはあまり触手が動かなくなっていた。
しかし復帰作の「忘却」ではKOHHを起用してて本当にびっくりした。R&B/Hip hop層へと再度アプローチしたのだ。全体的にはポップ色が強いfantomeだけれども、KOHHの起用で宇多田のR&B魂は忘れてないよ!という気持ちを垣間見えることができたような気がする。
そんなわけで前置きが長くなったが、コアなR&Bファンでも楽しめる宇多田の名作を客演物も含めて振り返ってみようと思う。
ラッシュアワー2のサントラに収録されて話題になったこの曲はなんとNeptunesがプロデュース。ネプ色は薄めだけどフォクシーブラウンがラップしているのが最高。
ニーヨのDo youのリミックス版。クリスティーナミリアンなどを手掛けるThe Heavyweightsによるミディアムナンバー。個人的には結構好き。
アテネオリンピック公式アルバムにも参加して話題になってました。淡々としながらもティンバ節が思いっきり炸裂した名曲。
90年代からアングラHIP HOPシーンで活躍していたカンパニーフロウのRJD2がなんとutadaをリミックス。メロディーは残しながら、RJD2っぽいデジタルで影のあるトラックを融合!
宇多田のアメリカデビュー作から。Let Me Give You My Loveもそうだったけど、なんとティンバランドと共作。ティンバっぽさは影を潜めて民族調な地味な仕上がりだけど、でもやっぱり名曲。
アメリカ第二段アルバムからのシングル。スターゲイトが手掛けていて非常に聴きやすい曲。現行のR&Bシーンを意識した作り。
戦場のメリークリスマスネタだから嫌いな人はいないと思う。坂本龍一×宇多田ヒカルという間違いのない組み合わせ。
売れっ子プロデューサー:トリッキースチュワートが手掛けた曲。Fatman scoopみたいな声が入っていたのでお気に入りだった。Dirty Desireもトリッキースチュワート制作。
日本のR&Bシーンに革命をもたらしたと言っても過言ではないM-floによるリミックス。FINAL DISTANCEの陰に隠れてしまったけれども、なんともm-floらしい仕上がりに。
ロドニージェーキンスによる初期のシングル。地味だけど、宇多田の歴史を語るには欠かせない曲なので入れてみました。
ジャム&ルイスが手掛けた名作。いかにもジャム&ルイスっぽい作りで、J-R&Bの概念を変えた一曲でした。
こちらもジャム&ルイスの名曲。メロディーの高低差が凄くて、線の細い宇多田の声が際立つ。
宇多田ヒカルとしてデビューする前にCubic U名義で出したカーペンターズのカバー。Cubic Uのアルバムも90年代R&Bっぽい音の作り。
もうポップスターの名を欲しいままにしている宇多田だけれども、復帰作のKOHHの起用でグッときて、久しぶりに昔の曲ばかり聴き漁っている。RJD2が宇多田のリミックスを手掛けているのもあんまり知られていないし、Ne-yoやティンバランドともがっつり絡んでいるので興味がある人はぜひ聴いてみてほしい。あとは宇多田ヒカルが心安らいで過ごせる日々が来ることを同世代のファンとしては望むだけである。